はじめに

皆さんは緑茶お茶が好きですか?
「大好きだ」という人こそはそこまで多くはないと思うのですが、寒いときにはホッとする優しいあの暖かいグリーンティの味。日本人の心。気持ちが安らぐ薄緑色に四季折々の思い出や、家族との時間を過ごした記憶が思い起こされます。
お茶には育つまでの長い年月と、いろいろな製造過程を経て皆様の前に届いています。
お茶を苗から育てて茶葉が取れるようなるためには4~8年かかります。
寒い冬に耐えられるよう藁を敷き、暖かくなってきたら雑草を取り除き、常に茶畑の状態を見続けてお茶の葉を育て上げます。
収穫時にも手間がとてもかかります。
専用の機械や人の手で丁寧に茶葉を摘み、集め、茶葉を蒸し、乾燥させ、不純物を取り除き…と、長い時間をかけて高品質なお茶ができるのです。
このきめ細やかな製造工程がお茶の品質に大きく左右します。
こんな多くの人が携わり、手間暇かけてできるものが日本茶です。
「なんと素晴らしいのでしょう」と思うと同時に、
もっと簡単に粗悪な葉っぱで大量に作れんもんかね。
って思いました。
新たな茶葉との出会い
それは夏の終わりかけのある日。
私は「こんな猫の額のような庭なのにすぐに芝生は伸びてくるな、コンクリートで埋め立てるべきだったわ」と悪態をつきながら芝刈りをしていました。
アイリスオーヤマの電動芝刈り機をブイブイ言わせ、近所迷惑を顧みず芝刈りを終えたときに、芝生ゴミがいっぱいになった収集袋を見て思いました。
「なんか、お茶の葉っぽいな」
掬いあげて、芝をまじまじと見てみました。
間違いない。こりゃお茶の原料だ。
圧倒的ビジネスチャンス
もし芝生がお茶になったらどうなるか。
日本のお茶の生産拠点が、静岡/鹿児島の茶畑から、全国のゴルフ場に変わります。
ゴルフ場ではコースを作るために芝生をとにかく刈りこみます。
そこで生み出される芝生の量は手間暇かけて作っている全国の日本茶の量とは比較になりません。1つのゴルフ場のパー4コースの芝生を1回刈れば、全国の緑茶の生産量を軽く凌駕できるのです。
全国には2,400のゴルフ場があります。
すべてのゴルフ場が18ホールあると単純計算すれば、
芝生のお茶の生産量は2,400×18ホールで、
なんと43,200倍の茶葉の生産地となりえるのです。

見えた。見えたぞ。大富豪の道が…。
ここで芝生を採取してお茶として飲めるようにし、その製造工程を確立し、芝生茶製造権の権利を得ることができれば、ゴルフ場から金をせしめ、消費者には安くて粗悪なお茶を売れる。
お茶農家以外誰も困らない最高のビジネスプランを思いついてしまった。
夢は止まらない
そのゴルフ場ごとの特色を持った芝でブランディングをすることで、さらなる利益を上げることも可能です。
正直どこの芝であっても大した品質に差はないと思うのですが、
例えば御殿場ゴルフ倶楽部の芝生のお茶って書いただけで、「かっこいい!!」「ほしい!!」「おしゃれ!!」「好き!!」ってなりますよね。
御殿場ゴルフ倶楽部とは契約がもう取れたようなものです。
年間契約で不労所得間違いなし。
で、契約をすることもできなさそうな、今にも潰れそうなさびれたゴルフ場に対しては、このゴルフ場の経営回復プランとして「芝生のお茶で一気に経営復活する戦略ありますよ」って企画を持っていき、芝生のお茶の生産に関しての年間契約を結び、金をせしめられそうですよね。
決まり文句は「御殿場ゴルフ倶楽部もお茶やってますよ?あなたのゴルフ場も御殿場ゴルフクラブみたいになりませんか?」です。

間違いない。
ブルーオーシャン。
金の生る木。
早速作ろう芝生のお茶
「芝生のお茶」だと言葉がちょっと長い。
芝生茶(しばふちゃ)
または、
芝茶(しばちゃ)と今後呼ぶようにする。
ただ、芝生茶だと「しばなまちゃ」と誤読しそうなので、
芝茶のほうをメインとする。
さて、まずは本当にお茶となるのかを実験していかねばなるまい。
新たな発見をするために実験するためには、いろいろな準備が必要なものだが、この芝茶のために準備するものなんてほとんどない。
考えもなく適当に始めようと思う。
茶葉の育成
お茶の材料である茶葉は芝なので、お茶づくりとしてクソ面倒な育成工程である「育苗」「定植」「幼木園管理」「剪枝」なんてものは必要ない。芝は勝手に生える。
見よ、この圧倒的な緑のパワーを
茶摘み(ちゃつみ)
専用の機械も、人手で一つ一つ摘む必要はない。
芝刈り機でガーッとやってしまえば終わりだ。
丁寧な作業をしていたら安価なお茶ができないじゃないか。
茶摘は一気に終わらせることにした。
終わらせた結果が冒頭に見せた芝刈り機にたまった芝生なのだ。
茶葉の洗浄
本来お茶を洗うという工程はなく、蒸すという工程があるのだが、
蒸すのは面倒だし、まず採取したばかりの芝生は汚い。
普通の日本茶と異なる「洗浄」という製造工程が現れる。
生命力の強い茶葉を洗浄していくのに丁寧さはいらない。
バケツの中に芝生をぶち込み、シャワーヘッドのホースで強く激しく洗っていく。

ゴミを間引いたりするために、オモチャのざるを使ったりしたが、全く効果がなかった。
ざるの目をゴミが通らない。それどころか細かい芝生が流れ出てしまって全くの逆効果であった。
単純にバケツの中で洗っていくだけでよさそうだ。

まぁ、幼児向けの砂遊び用オモチャにそこまで期待してはいけないな。
洗い終わった芝は、段ボールの切れ端に詰め込む。
びちゃびちゃの水分を吸った芝を段ボールに置くことにより、水分の吸収を速めてくれることを願って、あえて段ボールにしているのだ。

洗い終わった後の芝が上の写真。
質感は水菜を連想させた。
鍋とかに入ってるあの野菜ね。
お茶から離れていっている気がするが大丈夫だろうか。
あとはお茶の葉以外の黄色い茎の部分がとても目立つ。この茎の部分は触り心地も硬くて、ちょっとトゲトゲしているので嫌な気持ちにさせられる。
とりあえずは洗浄工程は完了としよう。
茶葉の乾燥
収穫した芝茶を乾燥させていく。
日本茶葉であれば、「粗揉機」→「中揉機・揉捻機」→「精揉機」という機械に順番に入れていき、茶葉に熱を加え、水分が均一に飛んでいくような精密な作業が必要になり、その工程を踏んだうえで、「乾燥機」に入れ「荒茶」というものが作られる。
が、今回作るものは芝茶である。
製造工程は簡単であればあるほど良い。
専用の機械を使うなんて論外である。
乾燥として取りうる手段は、そう。

天日干しである。
雑な段ボールに入れたまま快晴の太陽の元で乾燥させる。
色々な精密機械を通してお茶を作るのということは、果たして日本文化と言えるのであろうか、いや言えない。自然エネルギーを余すところなく使う自然乾燥こそが、真のお茶づくりなのである。
上記の写真は3時間ちょっと乾かした芝の状態。
水菜状態だった芝生がちょっとお茶に近づいたので一安心。
茶葉の選別
日本茶であれば、総合仕上機に乾燥した茶葉を入れ、ふるい分けや切断などして形を整えきれいにしていく工程である。
が、やはりここでも「総合仕上機」なんてものはコストの面で使用することができない。
ここは手間がかかってしまうが、手作業できれいな芝生を仕分けていく選別作業を実施する。小さな段ボールに浅く盛った芝生を選別するのなんて一瞬でできるとタカをくくっていたが、思っていた以上にきつい。
芝生はとにかく絡み合い、枯れ葉、ゴミ、茎、妙なトゲ、段ボールのクズなどと複雑に融合し、選別には困難を極めた。
正直舐めていた。
約15分の戦いで、硬いタイルの上で作業をしたため腰にダメージを受けた。この選別作業は大変であるが、正直どうしようもない。さすがにゴミごとお茶として売りに出してしまったら、訴訟は不可避であろう。
今回は1杯分のお茶に使うくらいの茶葉を選別することができた。
粗末な茶葉が目立たないように、高級感のあるグラス(プラスチック)に選別した茶葉を入れた。

よさげなグラスに芝を入れるだけで、圧倒的な芸術性が表現される。
インテリアのようである。
茶葉の仕上げ乾燥
仕上茶乾燥機に入れて、茶をさらによく乾燥させると同時に、独特のお茶の味やかおりを引き出す最終工程である。ここの工程がすべてのカギを担う。
なぜなら、「仕上茶乾燥機での技術がお茶の香りや味わいに大きく影響する」と、お茶の雑学のWEBページに書いていたためだ。雑学のWEBページを読んで、大切な工程であることを意識した私は、ちゃんとした方法で乾燥させることとした。
まずは仕上茶乾燥機に入れる前に、グラス内で最後の洗浄を行い、寄生虫などのリスクを低減したうえで、キッチンペーパーで丁寧にふき取った後、そのままキッチンペーパーでくるむ。
その後、茶葉を仕上茶乾燥機に入れる。
仕上茶乾燥機。そう。

電子レンジである。
時間短縮のため900Wという高出力で1分間の温めを行う。
マイクロウェーブによって、水分を一気に吹き飛ばしお茶としての品質を上げる最終段階を実行した。
ここでは日本のSHARPの技術力が光る。
が、背面を見るとMade in Thailandであった。
タイの技術力すごいね。
乾燥を行った後の芝生はキューティクルを失った髪の毛のようにボソボソになってしまったが、お茶というのはそんなものだろうと思い、ついに芝茶の元が完成したのだった。

完成した芝茶の写真。
圧倒的なクオリティがみなさまのモニター越しにも伝わるだろう。
さらにここから熟成させるために1日寝かせた。
お茶を飲む準備
一日経過したお茶は、前日までの色、形はほとんど変わらないものの、非常に脆くなっており、ちょっと力を入れて引っ張っただけでプツッとちぎれてしまった。
脆い緑のスチールウールのような素材に不安を覚えたが、本物のお茶の葉の乾燥状態もそんなものである。気持ちを落ち着かせてついに芝茶を飲む決心をした。
せっかく長時間かけて製造した芝茶である。
お茶を飲む準備は入念に行った。
水にこだわる
水道水汲み、ブリタの浄水装置に入れキレイにする。

ブリタの本体が埃かぶっていて汚いが、中身は奇麗だと思う。
また、ミネラルウォーターは信用できない。「六甲のおいしい水」とか「南アルプスの天然水」とか「宅配のウォーターサーバ」なんてものあるが、その辺の水道水を煮沸したものを詰め込まれている可能性も大いにある。それであれば自分で浄水した水を使ったほうが良いのは自明の理なのである。
今回使っているブリタの浄水器は「マレーラ」という名の商品である。
アフィリエイトを張りたいくらい良い商品であると思う。水道水の何とも言えない臭みを完全に除去してくれる。
茶器にこだわる
マレーラで高品質な水にしたものを、湯沸かしする。
湯沸かしとして使うものは、もちろんヤカンである。

めちゃくちゃ年代を感じるようなヤカンであるが、中身はきっと奇麗なはずだ。
こなれた感じのヤカンが、水をさらに上のステージに引き上げる。
茶葉を入れるのは急須である。
フリマで1,500円で購入した、質感の高い急須を使う。

渋い色味をしていてカッコいい。
ヤカンは汚いが、これはきれいだ。
お茶を入れる前に、ちゃんと茶器を温めることもした。
お茶の作法は万全だ。
最後に湯飲みであるが、
これは奇をてらって、グラスにした。

IKEAの150円の高品質の耐熱グラスである。
日本茶を飲むようないわゆる湯飲み茶器にしてしまうと、今回の芝茶の色味も分からないため、試飲には透明な耐熱グラスが良いのだ。
お茶を入れる
ついにお茶を入れた。
ブリタのマレーラによって澄んだ水と進化したものが、こなれたヤカンによって湯となり、渋くて素敵な急須にそそがれていく。

正直芝茶は適当に収穫して、適当に洗って、適当に天日干しして、適当に電子レンジにぶち込んだだけのものなので、このお茶を入れることには労力をかけたように感じる。
しばらく待つ
お茶を入れてふたを閉じしばらく待った。
驚いたことに「お茶の匂いがした」のだ。
脆い緑のスチールウールのような物体に成り下がってしまった時から、全く期待していなかったため、本当に驚いた。お茶が本当に飲めそうである。
お茶を飲む
急須からお茶をグラスに注ぐ。

これが芝茶である。
この澄んだ透明な液体が芝茶なのである。
もう少し色がついててほしかったのである。
一口舐めるように口に含むと、ほとんど味がしなかった。
二口目は大きく口に含み飲み込んでみた。
ほとんど味がしなかった。ほんのりと野性味あふれる野草の匂いがしたが、無味に近い。
感想
端的に言うと
失敗だった。
ただ、ビックビジネスチャンスがあることが分かっているのだから、ここであきらめるわけにはいかない。今回の失敗点をいくつか踏まえてリトライしようと思う。
御殿場ゴルフ倶楽部芝茶をなんとしてでも作らなければならないのだ。
お茶の工程について
詳細なお茶づくりの工程は包み隠さずYoutubeでアップしている。ぜひ見てほしい。
今後、競合他社が芝茶ビジネスに乗り出すであろうが、先行を走っている優位性は変わらない。余裕のYoutubeアップなのである。王者の風格だ。
参考文献
[お茶海苔 宇治園] お茶講座 知って得するお茶の雑学
[お茶百貨] お茶ができるまで
[日本茶マガジン] 【2021年版】お茶の生産量、最新ランキングTOP5
[名門ゴルフ場プラス]道府県別ゴルフ場数ランキング
[御殿場ゴルフ倶楽部] 公式HP
その他情報
その2もできた。
記事にするのはちょっと後。ぜひ見てほしいのである。
Youtube:芝生でお茶を作る その2
コメント
面白いwその2ではおいしい芝茶を期待してますw
※大富豪は無理でしょw
YouTubeは最初の草刈り機の音がうるさいからなんとかしたほうがいいと思いますよ びっくりした
コメントありがとうございます!!
確かに開幕からブォーンって騒音がすごいですよね。
ご指摘ありがとうございます。今後のYoutubeの投稿では音量もう少し編集で考慮します。